まつだ眼科形成外科|東京都狛江市

眼科一般診療をはじめ、まぶたや涙目に対する高度な治療を行います。

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まぶたの悪性腫瘍に対する手術について

脂腺癌の例
前回の記事でまぶたに出来る悪性腫瘍についてご紹介しました。本日はそれに対する治療について、実際の症例をもとに解説したいと思います。

眼瞼にできる代表的な悪性腫瘍には癌とリンパ腫があることは前回の記事でお話ししました。このうち、リンパ腫には放射線や化学療法といった内科的治療がメインとなるためまぶた手術の出番の機会は多くありません。一方、まぶたの癌に対しては一部の例外を除いて、放射線や化学療法の効果は限定的とされており手術治療が唯一かつ根治させることが可能な治療に位置づけられています。したがって、体の他部位に転移をきたしてしまう前に正しく診断して癌を手術で確実に取り除くことが何より重要となってきます。

手術の流れは”切除”と”再建”の2つに分けられます。切除は癌細胞を取り切ること、再建とは閉じられなくなったまぶたを作り直す作業のことを指します。切除の原則としては、まぶた内部に一つの癌細胞も残らない状態にすること、所謂癌細胞の完全切除といえます。これを達成するために癌の辺縁(マージン)から周囲に3mm程度の余白を設定し、腫瘤本体だけでなく余白を含めて大きくまぶたを切り取る必要があります。(左下の写真参照)。これは腫瘤のみの限定した範囲での切除で良い、良性疾患に対する治療とは大きく異なる点になります。また、癌細胞を完全に切除できたがどうか確認するため切り取った組織内の周辺部に癌細胞が残っていないかどうかの確認も病理検査にて別途行います。

本例では、結果として上まぶたの横幅3分の2程度の大きな欠損になってしまいました(オレンジ線で囲まれた部分)。このように小さなしこりであっても、それが癌の場合には想像以上に大きな欠損になってしまうことはしばしばあります。欠損部位はまぶたを閉じた状態でも目が露出するため、そのままであれば目が乾いてしまい視力低下に繋がりますので、それを予防するためまぶたを作り上げる必要があります。そこで再建の出番となります。
再建におけるポイントは、① 目を閉じたときだけでなく開けたときにも生理的な形状になっていること、② 目の安全を保つことの2点であり、動的な形状だけでなく機能性も求められる非常に難易度の高い手技といえます。動的に優れた形状を作るポイントは横方向の緊張を適切な程度に維持することで、これがきつすぎても逆に緩すぎても自然な開閉瞼はうまくできません。次に、良好な目の機能を保つポイントは目に優しい再建材料を選ぶことです。目と常に接触しているまぶたの裏面は瞼板であり、様々な材料があるなかで、瞼板を使って再建することは最も機能的なまぶたといえるかと思います。まぶたはまぶたで作る、このコンセプトが重要です。実際、他院でまぶたの再建を受けられた方で、見た目の形状は良くても眼表面に傷が付いてあり、頑固な痛みに長年悩まされている方に出会うことがあります。再建に用いる材料や適切な再建方法を選択することで、目に優しく見た目も美しい状態に仕上げることが可能です。本例では当院での再建によって見た目だけでなく、機能的なまぶたを獲得することが出来ました(右上下写真参照)。

少し長くなりましたが、本日は怖いまぶたの悪性腫瘍に対する手術のお話しでした。まぶたの癌は比較的稀な疾患ではありますが、だからこそいざという場面では豊富な経験を基にした迅速な対応が必要とされます。本日の内容を是非、皆さんの頭の片隅にでもおいて頂ければ幸いです。

 
2025年06月17日 23:00

まぶたにできる怖い”できもの” 「眼瞼悪性腫瘍」 

悪性腫瘍
左上:脂腺癌     左下:扁平上皮癌  右上:基底細胞癌   右下:悪性黒色腫

まぶたにできる”しこり”や”イボ”、所謂まぶたのできものでお悩みの方は多いと思います。まぶたには実に多くの種類のできものが生じますが、分類上、ものもらいや霰粒腫に代表される炎症性のもの、嚢胞性(水風船のようなもの)のもの、その他、腫瘍性のものなどがあります。たいていのできものは”医学的に大きな問題となることは少ない”ため、ゴロつくといった異物感や整容面などでご本人が気になるようであれば手術で切除したりします。しかし、なかには決して見逃してはいけない”怖いできもの”が存在します。

写真は代表的なまぶたの悪性腫瘍になります(全て自験例です)。悪性腫瘍は上皮性のもの(いわゆる”癌”)と非上皮性(悪性リンパ腫や白血病など)のものに分かれ、まぶたに関連が深い悪性腫瘍といえば、癌とリンパ腫が挙げられます。まぶたにも癌ができるの!?と驚かれる方もおられると思いますが、無理もありません。まぶたの悪性腫瘍は統計上、希少がん(6例未満/10万人)の扱いとされ、眼科診療の場面においても悪性腫瘍を診察する機会は非常に限られます。そのため、重要な疾患であるにも関わらず、認知度が低いためか良性のしこりとして診断されていたり、適切な検査がなされずに様子見となっている例なども残念ながら存在します。しかしながら上記の例は全身にできる癌と同様、局所で際限なく大きくなる(目周りの組織を壊す)だけでなく、全身へ転移をきたし命に関わることもあるため、様子をみることは基本的に許されない疾患といえます。癌治療における原則である早期発見、早期治療はまぶたの悪性腫瘍でも同様であり、手遅れとなってしまう方を少しでも減らすために疾患の認知度を高めていく必要があります。

当院は悪性腫瘍を含めたまぶたのできものに対する豊富な治療経験があります。次回のブログでは悪性腫瘍に対する診断のポイントや当院で行っている眼形成のテクニックを用いた最新治療の実際についてお話ししたいと思います。


 
2025年05月01日 21:05

眼瞼下垂手術における定量時の確認事項について

ピーク差
眼瞼下垂手術の目的は下がったまぶたを挙げることですが、ただ挙げるだけではなく適切な高さや形といった所謂まぶたの形状についても整える必要があることは言うまでもありません。まぶたの挙上は挙筋群を引っ張ってきて瞼板上に縫合固定する(=筋の前転)ことで得られますが、筋の前転量や瞼板上の固定部位を変えることでまぶたの挙上程度やカーブ形状の調整ができます。筋の固定後、患者さんにまぶたを開け閉めしてもらい適切な状態にあるかどうか、医師が確認する作業のことをまぶたの定量と呼びます。この定量は術後の状態を左右する大事な作業であり、筋を固定し直す度にその都度定量をおこないます。本日は定量にあたって執刀医がどのあたりに注意して診ているのか解説したいと思います。ただし定量時の確認事項は各医師ごとで細かな違いがあると思われます。本日の内容はあくまで私の基準ということでご理解頂ければ幸いです。

定量時の確認事項を大まかに列挙しますと、
まぶたの高さ ② カーブ形状 ③ 二重の幅 ④ 兎眼の程度 ⑤ 眉毛の高さ
となります。
① まぶたの高さは始めに確認すべき項目です。患者さんがもともと有している上眼瞼挙筋の筋力次第で、容易に挙がるまぶたもあれば大量に筋を引っ張っても挙がりにくいまぶたもあります。挙げ幅は最大でも上方に白目が出ない程度に留めることは言うまでもないことですが、術後にドライアイを発症するリスクが高めの方では通常程度の挙がりであっても目が乾いてしまい痛みに繋がることがあるため、その場合には定量時に高さを控えめとしなくてはなりません。この点の確認は眼科医であれば出来ることから、目に優しい眼瞼下垂手術を最優先にお考えの方は、まずは眼科医にご相談されるのが良いかと思います。
② カーブ形状とは上まぶたの瞼縁の形状のことを指します。上向きになだらかな曲線である状態が生理的なカーブ形状です。カーブの頂点の位置は個人差はあるものの大抵の場合、瞳孔中央上もしくはやや外側寄りに位置します。しかし筋の前転後、カーブ形状は大なり小なり変化してしまい、頂点の位置が内側寄りか外側寄りかで見た目の印象は大きく異なってくることがあります。三角目はもとより、頂点の位置の変化は整容面で大きな問題になることがあります。
③ 二重作成後には二重の幅についても確認します。以前のブログで二重幅を決定する因子について(術後の二重瞼の幅を決める要素とは?)、またカーブ形状と二重幅の関係性について(切らない眼瞼下垂手術:生理的なカーブ形状の利点について)それぞれ説明致しました。お示しした左右の写真ですが、同じ方で手術中に筋の固定をわずかに掛け替えた例になります。まぶたの高さには左右の写真ともほぼ違いがみられません。しかし、カーブ頂点の位置がわずかに異なることで二重幅の均一性にも違いが出ている(左:不均一の例、右:均一の例)ことがお分かりでしょうか?①~③の項目はそれぞれが互いに密接な関係にあるため、単一の項目のみを評価すべきものではありません。定量においても真っ先に確認すべき内容といえます。
④ 兎眼とは目が閉じきれない状態を指しますが、皮膚を切る手術では麻酔によって目を閉じる筋肉である眼輪筋も麻痺するため、手術中における兎眼はある程度、許容することができます。兎眼の程度は目の安全を確保するうえで大事な項目ですが、許容できる程度はお一人お一人で異なるため、個別に検討すべきと考えます。また、筋の前転量が左右で違いがあるかどうかを予想する上でも兎眼の程度は参考となります。これについては後日また解説したいと思います。
⑤ 眉毛の高さについては、下垂がある状態ではまぶたを何とかして挙げるため代償として過剰に挙がっているのが通常です。下垂治療がうまくいくと、代償作用は不要となりその結果、下降する傾向にありますが、眉毛を挙げる癖次第では下がりにくいこともあります。その場合、二重幅は予想より広くなってしまいますし、反対に予想より眉毛が下降した場合には皮膚被りや二重幅にも影響を与えてきます。

本日は眼瞼下垂手術の定量時における確認事項について解説しました。やや専門的な内容でしたが、手術を受けられる方にとっては誰しも経験する”ちょっと気になる知識”といえたのではないでしょうか。下垂治療を検討されている方の参考になりましたら幸いです。

 
2024年03月27日 16:27

眼瞼皮膚弛緩症に対する治療について

プレゼンテ
眼瞼皮膚弛緩症はまぶたの弛み(余剰皮膚)により視界が遮られたり重さを感じる状態のことをいいます。まぶたの縁が下がった状態である眼瞼下垂に合併する場合も多くありますが、それ単独で存在することもあります。本日は眼瞼皮膚弛緩症に対する治療について概略をご説明します。

まず病態についてですが、眉毛から睫毛までの距離は(骨格的な距離として)個人個人に決まった長さがあります。その長さに一致した皮膚の量(=バランスが取れた状態)であれば問題ないのですが、加齢とともに皮膚が薄く伸びてきてしまうことで骨格の距離に比して皮膚の量に余剰が生まれます。骨格の長さに対する皮膚の余剰は睫毛に対して負荷を掛ける(アンバランスな状態)こととなり、その代償として眉毛を挙げる行為がまぶたの重みや眼精疲労、頭痛・肩こりなどに繋がることになります。

眼瞼皮膚弛緩症に対する代表的な治療法には眼瞼形成術眉毛下皮膚切除術があります。両術式ともに様々なバリエーションがあり、それを加味しますと数多くの術式が存在することになりますが、大切な点はいずれの術式においても崩れてしまったバランスを整えて睫毛に対する負荷を減らすというコンセプトが共通していることです。では、どのように術式を選べば良いのか、ここでは簡潔にご説明しますと、二重(ふたえ)がしっかりしていない状態の方には、当院では原則、眼瞼形成術をお勧めしています。二重を作成することは一重(もしくは一重に近い二重)の状態に比べ再発予防、目立たない傷跡、視機能改善といった面で優位性があるためです。ただし、もともと一重の方の場合、二重になることによる見た目の変化は大なり小なり避けられませんので、そのことを気にされる場合には別の術式をご提案することになります。

写真は眼瞼形成術の例になります。術前と比べて、手術後には正面視・上方視ともに視界の広がりを容易に想像して頂けるかと思います。それだけでなく上記に記載したような機能的な改善も得ることができます。次回からは眼瞼形成術や眉毛下皮膚切除術の実際、両術式における選択のポイントなどについて解説していきます。
2024年01月06日 09:30

ミュラー筋タッキングの例

プレゼンテーション1
前回、切る眼瞼下垂手術のバリエーションについて解説いたしました。本日はそのうちの一つであるミュラー筋タッキングについてご説明します。

術式選択の際、当院では高い矯正力(まぶたを挙げる力)や再発の少なさの観点から挙筋腱膜前転を第一選択としています。しかしながら状況によっては、挙筋腱膜前転ではなくミュラー筋タッキングを選択したほうが良いこともあります。その選択のポイントについて以下に説明します。

軽度の眼瞼下垂例では、微調整が重要視される観点からミュラー筋タッキングの良い適応となる場面があります。
下垂の矯正力はミュラー筋のほうが通常はマイルドであることから、軽度の眼瞼下垂に対しては、微調整のしやすさの点でミュラー筋タッキングの良い適応となることがあります。反対にミュラー筋のほうが牽引力が強い例も稀にあり、その場合にはあえてミュラー筋タッキングを選択します。
また再手術例などで腱膜を綺麗に剥離することが困難な場合、ミュラー筋が保たれていれば代用することもあります。
まぶたの生理的カーブ形状の出しやすさの点ではミュラー筋が非常に優れており、挙筋腱膜を用いての定量の際、カーブ形状が急峻となる場合にはミュラー筋タッキングに切り替えるようにします。
その他、術前にドライアイを有する例では術後のまぶたの閉じやすさは眼表面の安定において重要であり、柔らかい筋であるミュラー筋を用いるほうが有利です。特に先天下垂の要素があるまぶた(組織が硬い)では閉じやすさを優先してミュラー筋タッキングを選択することがしばしばあります。
一方で、術後の一過性の戻りはミュラー筋タッキングの懸念点であり、その対策として症例写真のようにやや過剰ぎみに挙げておくことも戦略のひとつになります。

余談ですが、本術式は眼科医の間ではよく施行されている一方、形成外科の領域ではほとんど行われていないようです。ミュラー筋は自律神経の一つである交感神経支配を受けており、ミュラー筋に傷を付けることは自律神経に関連した有害症状を引き起こす原因になると考えられているためです。しかし、実際にそのような合併症について明確に記した報告は現在までに存在しないことから、眼科医の間ではミュラー筋障害による症状の発生については非常に懐疑的な見方が一般的です。この点に関しては今後の研究が待たれるところです。



 
2023年12月22日 07:14

眼瞼下垂手術のバリエーション:前転組織による違い

図です
本日は眼瞼下垂手術のうち、国内で広く行われている”切る手術”についてご紹介したいと思います。やや専門的な内容になりますが、なるべく解りやすく説明するつもりですので頑張ってついてきて頂ければと思います(笑)。以前、切らない眼瞼下垂手術のバリエーションについて書きましたが、切る眼瞼下垂手術についても手技の細かい部分での違いなどの観点から様々なバリエーションが存在します。それらを一括りに分類していくことはやや無理があるのですが、どの組織を操作(前転)するのかといった観点で各術式を眺めてみるとそれぞれの特徴を比較的掴みやすいかなと思います。本日は切る下垂手術の分類を説明したいと思います。”分類といってもうちは単一の術式のみしか行っていないよ・・”といった施設もあるかと思いますが、眼瞼下垂の病態や程度は千差万別であるため、症例に応じた対応が出来るほうが良好な結果を出しやすいのではと個人的には考えています。

まず眼瞼(まぶた)の解剖について簡単に述べます。眼瞼内には眼瞼挙筋が存在し、この筋の収縮がまぶたに伝わることでまぶたが開きます。伝わると書いたのは、眼瞼挙筋自体がまぶたに直接繋がっているのではなく、筋の先端が眼球の直上付近で挙筋腱膜とミューラー筋の二つに枝分かれし、これらがまぶた内部を併走したあと、まぶた末端に付着しています。従って、実際の手術では挙筋腱膜およびミューラー筋の単独もしくはその両者の前転が行われています。前転というのは、標的の組織に糸を掛けて手前側に牽引を掛けた状態で固定することをさし、この操作によって眼瞼挙筋の張力を増やすことができます。前転の標的組織として、①挙筋腱膜、②ミューラー筋、③挙筋腱膜とミューラー筋の3種類となります。

挙筋腱膜前転:開閉瞼の2つの動力源のうち挙筋腱膜のみを前転する方法で、国内の形成外科や眼科、海外を含めて最も一般的に行われている術式です。ミュラー筋よりも矯正力が高く(まぶたを挙げやすい)、再発も少なく、また組織へのダメージも少ない点などが利点です。ただし、時に上まぶたのカーブが急峻となりやすい点や閉瞼のしにくさなどが欠点といえます。

ミューラー筋前転(タッキング):挙筋腱膜は触らずにミュラー筋のみを前転する方法で、主に国内の眼科で広く施行されている術式です。生理的なカーブ形状を出しやすい、閉瞼がしやすいなどの特徴があり、手技としても筋へのアプローチが容易で、組織へのダメージも少ない利点があります。欠点としては矯正力が挙筋腱膜より弱い傾向にあること(例外もあります)、術後にやや戻りがある点などが挙げられます。

挙筋群前転:挙筋腱膜とミュラー筋の両者を前転する方法です。矯正力の点では最も強力な方法であり再発も少ないといえますが、組織へのダメージが大きい点が欠点といえます。

当院では矯正力の安定感からまず①挙筋腱膜前転を選択します。そして定量時に生理的カーブ形状が得られにくい場合(三角目など)には②ミュラー筋タッキングに移行するようにしています。
施設によっては単一の術式のみしか対応していないところも多いですが、上記に記してきたように、状況に応じて術式を使い分けることは非常に大切です。当院では切らない手術だけでなく、切る手術でも豊富な治療経験があり、様々な状況において最適な選択肢をご提供できるよう常に心掛けています。眼瞼下垂でお悩みであれば是非一度ご相談にいらしてください。
2023年11月25日 16:11

片側ずつ行う眼瞼下垂手術の一例

プレゼンテーション115
ヘリング現象についての内容が続いておりましたので、本日はそれにちなんだ内容を少しお話ししたいと思います。

おさらいですが、ヘリング現象は片側の下垂手術の後に、反対側のまぶたが下がってしまう現象のことです。
前回の記事で、ヘリング現象は”反対側の強い開瞼を促す刺激によって、手術後のまぶたが過剰に挙げられている状態とも言い換えられる”とお伝えしました。
そこで、片側ずつの眼瞼下垂手術を行った際、写真に示すように始めに手術した側が過剰に挙がることがある点を知っておいて欲しいと思います。この過剰に挙がるとはどういうことかというと、手術の際に定量によってまぶたの高さを調整しますが、決定した高さ以上に術後に挙がってしまっている状態をさします。抜糸の際(術後1週間前後)、まぶたは閉じにくい上、見た目も上に白目がでている状態な訳ですから、定量をしっかりやっていないのではないかと思ってしまうのも当然ですし、反対側の手術をこのまま受けて良いのかどうか不安になってしまいますよね。

ここで大事な点は、ヘリングの影響が強く出ている可能性を思い浮かべられるかどうかということです。経験が浅いドクターでは過剰に挙がってしまったまぶたに対して、下げる手術を予定してしまうといった誤った選択を選ぶリスクがあるかと思います。慌てずにその可能性を考慮することができれば、反対側の手術をする際、過剰に挙がっているまぶたの高さに揃えようとするのではなく、前回の手術の際の定量時の高さをしっかりと覚えておき、そこに照準を合わせる戦略を取ることができ、そのことは左右差を少なくする上で大変重要です。写真をご覧頂ければ、過剰に挙がった右のまぶたが左の手術後に落ち着いていること確認できるかと思います。

ヘリング現象の出方は全ての方で異なってきます。眼瞼下垂手術において左右を揃えることの難しさがお分かり頂けましたでしょうか?
 
2023年11月10日 09:41

ヘリング現象を活用した治療例について

プレゼ
前回の記事では眼瞼下垂手術におけるヘリング現象について説明しました。左右差の原因となるやっかいな現象といえますがその反対に、この現象をうまく利用することで良好な結果につなげられることがあります。本日はヘリング現象を活用した治療例について解説したいと思います。

写真は以前、右眼瞼下垂手術を受けられた方です。右側のまぶたがやや過剰に挙がり過ぎていることを大変気にされていました。再手術で右まぶたの高さを下げることも検討しましたが、左側の眼瞼下垂が見られ始めていたため、ヘリング現象を期待して左側の下垂手術を行いました。手術後、左側が適切な高さまで挙上されると同時に、右側のまぶたの位置は落ち着いた範囲へと収まり、その結果、左右差の解消を達成できました。

しかしながら、本例のように反対側の過矯正を対側の手術によって必ずしも改善できるとは限らないことも付け加えておきたいと思います。前回の記事で、ヘリング現象の発生は反対側のまぶたの状態次第であると書きました。その仮説に基づくと、本例では右側のまぶたは手術後の状態にあったことから、未治療の状態よりも内部はしっかりとした状態にあったと推測されます。従って本例でヘリング現象が生じた理由は、術前の左側の下垂に対する開瞼刺激がとても強く、それにつられる形で右側も過剰に反応していたためであったと考えられます。とするならば、”右まぶたは過剰に挙がっていたというよりも、左まぶたの強い開瞼刺激によって挙げられていた”と考えることもできると思います。

まぶたの高さは互いに影響し合う、といわれる理由がお変わり頂けましたでしょうか?
本日の内容がヘリング現象をより深く理解する一助となれば幸いです。


 
2023年10月28日 11:49

ヘリング現象について

ヘリング現象 図
眼瞼下垂手術後によくある問題のひとつに「左右の違い」があります。この左右差が生じる理由には手技的な問題や患者側の要因など様々あるのですが、たとえ正しく治療が行われていても生じてしまう理由のひとつにヘリング現象があげられます。本日はこのヘリング現象についての説明をしたいと思います。

ヘリング現象とは片側の下垂手術例において治療後に反対側のまぶたが下がってしまう現象のことをいいます。図のように片側のみの眼瞼下垂例(反対側は正常の高さ)の治療に際しては当然、反対側と同じ高さに挙げることが目標となりますが、その高さが達成されたとしても、期せずして反対側が下がってしまい、結果として左右差につながってしまうことがあります。本現象の起こる原因の詳細は不明なのですが、想定されている機序は以下のとおりです。開瞼に対する脳神経からの指示は左右で同一であること、つまり、右と左のまぶたで別々に開瞼指示が行われているのではなく、脳内における一点からの刺激が左右のまぶたに同じように入っており、手術前に両側同程度に生じていた開瞼への強い刺激が手術によって弱まることで起きるとされています。

ヘリング現象によってどの程度術後に下がるのか、どれくらいの頻度なのか、開瞼を要求する刺激の程度を測る方法がないため、いくつかの論文による研究はあるものの未だはっきりとした答えを呈示することはできません。しかし私見にはなりますがこの現象の発生率は反対側のまぶたの状態次第で変化しうると考えられます。高齢者や両側装用者のコンタクト性下垂などでは反対側の脆弱性が想定され、より注意が必要になるといえそうです。”左右のまぶたは互いに影響し合う”、その所以となるヘリング現象についての解説でした。

 
2023年10月03日 11:49

切らない眼瞼下垂手術:生理的なカーブ形状の利点について

3角目
前回の記事において、切らない眼瞼下垂手術についての利点の一つである”カーブ形状の出しやすさ”について書きました。本日は”まぶたの生理的なカーブ形状を出すことの意義”について、改めて考えてみたいと思います。

生理的なまぶたのカーブ形状とは、内側から外側に渡ってなだらかな上まぶたのカーブを呈した状態を指します。そして、まぶた形状は切るもしくは切らない眼瞼下垂手術において挙筋群を前転することで大なり小なり変化することになります。仮に生理的なカーブ形状が得られなかった場合、それのみでも見た目の不利益となってしまいますが、実はそれに伴って二重幅の均一性も同時に崩れてしまうことが多いことは知っておくべきと考えます。切る眼瞼下垂手術では皮膚切除を併施することが多く、皮膚切除量の範囲を決める際には二重幅の均一性を意識して始めにデザインを行います。つまり、生理的なカーブ形状が得られる前提で皮膚切除を行っているのです。このことは切る手術の懸念点の一つとして知っておくべき内容と思われますし、切らない眼瞼下垂手術におけるカーブ形状の出しやすさの利点に繋がってくるものと思います。

呈示の写真は切る眼瞼下垂手術後の例ですが、カーブ形状は中央が上に凸の状態、いわゆる三角目を呈しています。生理的なカーブ形状が得られておらず、それに伴って二重幅は内側と外側は広めで反対に中央のみ狭くなっており、全体として二重幅の均一性が崩れてしまっているのが分かります。

本日はカーブ形状と二重幅の均一性の関係性およびそれにまつわる切らない眼瞼下垂手術の利点についてのお話しでした。
2023年10月01日 21:10
診療時間
 
AM 手術 - - 手術 -
PM - - 手術 手術 - -
9:00~12:00/14:30~17:30
「●」は9:00~13:00
休診日:火・水・日・祝日
受付開始は診療開始15分前から、受付終了は診療終了15分前まで。
手術枠では診察は行っておりません。ご予約の方優先となりますので、事前にお電話でのご予約をお勧め致します。
03-5761-4406
東京都狛江市和泉本町4-2-13 SANTE SAKAE 102

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