「眼瞼下垂症」と「眼瞼皮膚弛緩症」の違いについて
写真:左 眼瞼下垂例 まぶたの縁が下がっている。まつ毛が見えていることからも縁が下がっていることが分かる。
右 眼瞼皮膚弛緩例 一見すると眼瞼下垂にもみえるが、皮膚を摘まんでみると真の瞼縁が見える。
両疾患は程度の差はあれど(特にご高齢の方は)合併している場合が少なくありません。仮に両者が合併している場合、眼瞼下垂の重症度に応じて皮膚弛緩の見た目の程度が変化します。(今”見た目”と言いましたが、皮膚弛緩の程度を正確に見積もることは大変難しく、余剰皮膚の目への被りの程度や二重幅(ふたえはば)の広さなどを参考に見積もる形を取っています。)下垂の程度が重度の場合には皮膚弛緩は目立たず、下垂の程度が軽度であれば皮膚弛緩は目立つ、といった傾向にあります。
ここから本題に入りますが、それらの違いを正確に把握すること、これが治療法を選択する上で重要な意味をもちます。例を挙げますと、日常の外来において患者さんから「切らない眼瞼下垂手術は出来ますか?」と質問を頂くことがしばしばあります。しかし、切らない眼瞼下垂手術はあくまで「眼瞼下垂」に対する術式であり、「眼瞼皮膚弛緩症」に対する術式ではありません。つまり、皮膚弛緩を軽度~中程度合併した眼瞼下垂例であるならば、工夫次第で適応可能なこともあるのですが、眼瞼下垂はなく皮膚弛緩が単独で存在する例では適応になりません。
眼瞼下垂と眼瞼皮膚弛緩症の合併例においては、下垂の程度を考慮に入れた上で皮膚弛緩量を見積もることで、最適な術式が決まってくるということになります。まぶた治療では執刀医の技術の善し悪しも大切な要素である点は論を待たないと思いますが、それ以上に大切なことは、術前の的確な診断が出来るかどうかにあると思っています。どれほど上手い術者でも目の前のまぶたに対して最適な術式を選ぶことができなければ最良の結果を得るのは難しいと思われます。眼瞼下垂と眼瞼皮膚弛緩症を適切に診断できることが何より大切である、という点をお分かり頂けましたでしょうか?
2022年07月20日 17:50